婦人科がんの手術について
婦人科がんには、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、外陰がんなどがあります。がんが進行すると、原発臓器からリンパ節へ転移することがあります。手術を行う場合、通常は原発臓器とリンパ節の摘出を行い、病理検査によってがんの進行度や組織型を確定します。リンパ節転移がある場合、再発リスクが高まり、追加の治療が必要になることが多いです。
婦人科がんの手術には、**がんを取り除く「治療」**としての側面と、**再発リスクの評価や術後治療の方針を決定する「診断」**としての側面があります。
リンパ節郭清とは?
リンパ節の転移を調べるために、転移しやすい領域のリンパ節をすべて摘出する「リンパ節郭清」を行うことがあります。しかし、リンパ節郭清を行うと、リンパの流れが滞り、リンパ浮腫という合併症が起こる可能性があります。婦人科がんの手術では特に、骨盤リンパ節郭清が必要になることが多く、下肢のリンパ浮腫が発生しやすくなります。
近年、手術技術の向上により重度のリンパ浮腫は減少していますが、一度発症すると完治が難しいのが現状です。例えば、早期の子宮体癌の場合、骨盤リンパ節郭清を行うことがありますが、実際のリンパ節転移率は低く(術前にStage IAと想定される症例で約5%)、多くの患者さんにとってリンパ節郭清は不要である可能性があります。
センチネルリンパ節ナビゲーション手術とは?
センチネルリンパ節とは、がんが最初に転移する可能性があるリンパ節のことを指します。このセンチネルリンパ節を手術中に特定し、迅速病理診断で転移がないことを確認できれば、リンパ節郭清を省略できる手術が「センチネルリンパ節ナビゲーション手術」です。
この手術では、リンパ節郭清を省略できるため、リンパ浮腫のリスクを大幅に低減できます。また、摘出したセンチネルリンパ節は従来よりも精密に病理診断を行うため、転移の見落としを減らしながら、より確実に評価できるという利点があります。
メリット
- ・リンパ浮腫を防ぐ:リンパ節郭清を省略することで、リンパ浮腫のリスクをほぼゼロにできます。
- ・がんの転移を正確に評価:センチネルリンパ節のみを詳細に解析することで、見落としを減らします。
- ・手術の負担を軽減:不要なリンパ節郭清を避けることで、術後の回復が早くなります。
現在、乳がんや皮膚がんではすでに保険適用となっており、一般的に行われている手術です。婦人科がん領域でも早期の外陰がんに対して保険適用となっており、子宮頸がんや子宮体がんにおいても有効性が多数報告されています。
当院での取り組み
当院では、院内の「高難度医療・未承認医薬品等管理室」の承認を得て、早期の子宮頸がんおよび子宮体がんの患者さんに対し、センチネルリンパ節ナビゲーション手術を提供しています。2024年5月に開始し、2025年3月現在で約20名の患者さんに実施しましたが、これまで大きな合併症は1例もなく、リンパ節転移が陰性であった患者さんは全員、リンパ浮腫を発症していません。
この手術にご興味のある方は、お気軽にご相談ください。