教室員の風景

2019年8月

『人の一生を診る科』

初めまして。2019年4月に入局致しました、専攻医1年目の小川智恵美と申します。

入局してから早4ヶ月が経過し、日中涼しい病院内にいるため気づきませんでしたが、外はすっかり猛暑で蝉の鳴き声がうるさいほどの季節となりました。目の前の仕事をこなすことに必死であっという間に時間が過ぎてしまい、自分が日々成長できているのかふと不安に思うこともありますが、尊敬する上司や信頼できるスタッフの皆さんに支えられ充実した毎日を送っております。

7月某日、4月から担当していた卵巣癌末期の患者さんが亡くなられました。4月からと言いましたが、実際は2年目研修医で産婦人科をローテートしていた時から手術や化学療法の初回入院もずっと担当していた患者さんです。その患者さんをお見送りした夜、2件の緊急帝王切開があり、私もたまたまその手術に立ち会いました。一晩のうちに人の死と2つの新たな命の誕生の瞬間に立ち会い、人の輪廻転生を見たような、感慨深く不思議な気持ちになりました。

学生時代、いつかの産婦人科の講義で、「産婦人科は生命の生まれる瞬間から、思春期、更年期、そして死まで、『人の一生を診る科』だ」と聞きました。このような経験は他の診療科ではできないことでしょう。そんな特別な科を選択したことは、私の人生において最良の選択の一つであったと確信しております。

そんなことに改めて気づく機会を与えて下さったこの患者さんに感謝申し上げるとともに、心よりご冥福をお祈り致します。

さて、このページを見たときから気になっていた方も多いのでは無いでしょうか。一体何の写真なのかと。私が産婦人科を志した理由の一つは腹腔鏡手術に興味があったからなのですが、写真は私が腹腔鏡の鉗子で折った鶴です・・・鶴です。

次回また記事を書かせていただく時には、この『人の一生を診る科』で患者さんの人生の節目をより豊かなものにできる医師になっているように、そしてもっとまともな鶴が折れるように、努力精進致します。