医局長の木村です。今回は、女性診療科の腫瘍部門についてお話ししたいと思います。この部門では女性生殖器にあたる臓器、主に子宮、卵巣に発生した腫瘍(できもの)を手術やお薬などで治療していきます。一言に腫瘍と言っても良性悪性のみならず、発生する臓器に特異的な性格を有しており、これらの性格を十分に理解して治療していく必要があります。よって治療する前に腫瘍の性格をできるだけ知っておく必要があります。子宮に関しては、入り口や内膜(生理の時に剥がれる)の細胞を診察時にとってくることができるので比較的容易に診断がつき腫瘍の性格が分かりますが、子宮の筋肉内や卵巣については細胞をとってくることができないので血液検査や超音波検査、MRI(磁石の力を使ってできものの性格を解析する機器)などによりおおよその診断をつけます。最終的な診断は手術時得た組織により診断をつけることとなりますが、術前に悪性を疑う場合にはどの程度に腫瘍が広がっているのかをCTなどにより調べておきます。このように腫瘍が認められた場合には、その性格、大きさ、広がりなどを調べどのように治療したらよいかを考えます。治療方法にはホルモン療法などの薬物療法の他、開腹や経腟、あるいは内視鏡による手術療法、悪性であった場合には抗がん剤治療、放射線治療などがあります。
大きな診断と治療の流れを紹介しましたが、腫瘍自体の性格を熟知し、手術療法についても技術が必要で、抗がん剤を含めた薬物療法についてもその薬物一つ一つの特性を知る必要があり膨大な内容となることが理解できると思います。知識のbrush upは欠かせませんが、写真は私の愛読書のひとつ婦人科のバイブルであるNovak’s Gynecology 15th editionと各種ガイドラインです。
昔と違って現代では各学会が治療のガイドラインを作成していますので、基本となる治療方針は容易に参照できますが、患者さんひとりひとりの病状や背景、希望は一様ではありません。また、良性・悪性に関わらず、現代においても難治性であったり、治療方法などに未解決の問題が残されていたりすることも数多くあります。そこで、各人に合った治療方法を決定するために、そして最先端の医療を提供するために、臨床カンファレンスの場にはそれぞれの専門性を持つ者が集い,全員が一丸となり常時検討を続けているのです。
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